XY―男とは何か

XY―男とは何か

ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)

ようこそ女たちの王国へ (ハヤカワ文庫SF)

『XY』を読んでからウェン・スペンサーを読むと非常にいい感じ。18世紀イギリスとアメリカの開拓時代を混ぜたような文明レベルで、男女比が1:20の女性上位社会という設定。男性は土地や家畜と同じように女家長の所有物として扱われ、婚資と引き換えに売られるか、他の家の男児と交換され、嫁ぎ先の娘達全員と結婚する。今までに読んだ男女逆転物でトランスジェンダーが一番良く出来ている。とくに次の下り。

「(略)ジェリンは姉さんたちが男子のドリックと女子のへリアに同じようにしていると思うかい? 男の子は生まれた日から、みんなに抱きしめられ、かわいがられる。でもヘリアは、姉さんたちに厳しくしつけられた。家の財産をどうやって守ればいいか、教えこまれた。ドリックはね、他人が自分を抱きしめたがっても、なんとも思わないだろう。しかしヘリアは、短剣を取りにいく」

近代における男性性の形成を鋭く突いた一文だと思う。フェミニズムSF(これもそろそろ陳腐化した枠組みだけど)としてかなり面白かった。ストーリーは結構『アリアドニの遁送曲』だけど、エンターテイメントとしてというかライトノベルとしてというか、日本のオタク相手にかなり広範囲に戦えるところがまた凄い。主人公は15歳の才気煥発な美少年でまず腐女子ゲット。一夫多妻制で姉妹全部と結婚するので熟女から幼女まで揃ってます。姉萌え妹萌えもドンと来いという門の広さです。